怪我と予防 2026-09-17

ラグビーの突き指・指の靭帯損傷|大学生プレーヤー向け予防と対処法

パスを受けそこねた瞬間、タックルで相手のジャージをつかんだ瞬間、ラックで指がねじれた瞬間。大学ラグビーの練習・試合では「ちょっと突き指しただけ」で済ませてしまう場面が日常的にあります。テーピングを巻いて練習を続け、そのまま数週間放置してしまった経験がある部員も少なくないはずです。しかし突き指と呼ばれる怪我の中には、靭帯損傷や骨折、指が伸びなくなる変形が隠れていることがあり、自己判断で済ませると治りが悪くなったり、関節が不安定なまま残ったりする可能性があります。この記事では、大学ラグビーの現場を想定して、突き指・指の靭帯損傷がなぜ起きやすいのか、やってはいけない対処は何か、練習前にできる予防は何かを、スポーツ医療・ラグビー競技団体の公開情報をもとに整理します。

なぜ大学ラグビーで「突き指」が多いのか

公益財団法人スポーツ安全協会(Spo-An)が公開している、日本ラグビー協会メディカル委員会・安全対策委員会委員が監修する外傷データによると、大学生年代(19〜22歳)のラグビーにおける外傷のうち、捻挫・突指が全体の約47%を占めるとされています。ほぼ半数が捻挫と突き指という結果は、他の年代(中学生では手・指の骨折や肩関節の脱臼が目立つ傾向)と比べても、大学生年代に特徴的な傾向といえます。

理由として考えられるのは、大学生になるとプレーの強度・スピードが上がり、パスの受け渡し、タックルでのバインド、ラックやモールでの接触といった「指先に負荷がかかる場面」そのものの頻度と強さが増すことです。ボールが指先をかすめてそのまま突き指になるケースもあれば、相手選手のジャージや体に指を強く引っかけてしまうケースもあります。いずれも一瞬の出来事のため、受傷した本人も「大したことはない」と感じやすく、練習・試合をそのまま続けてしまいがちな怪我でもあります。

突き指の重症度を自己判断だけで済ませてはいけない理由

「突き指」はひとつの決まった怪我を指す言葉ではなく、指に外力が加わって起きた怪我の総称です。ザムスト SPORTS MEDICINE LIBRARYによると、突き指には靭帯や腱の損傷、骨折、関節脱臼などが含まれ、特に親指の付け根(MP関節)や他の指の第二関節(PIP関節)で起きやすいとされています。

軽度の場合

McDavidのスポーツ医療解説では、靭帯損傷の重症度を大きく3段階に分けて説明しています。関節は安定しているものの靭帯が伸びている、あるいは微細な損傷にとどまっている状態がもっとも軽い段階で、この場合は比較的短期間で回復することが多いとされています。

中等度・重度の場合(側副靭帯損傷・マレット変形)

一方で、関節に不安定感がある、靭帯の一部または大部分が切れている、といった中等度〜重度の損傷になると話は変わってきます。真田整形外科の解説によると、指の側副靭帯損傷を放置すると、関節が本来の曲げ伸ばしの機能を十分に発揮できなくなり、痛みや不安定性が残ってしまうことがあるとされています。また、指の第一関節が曲がったまま伸びなくなる「マレット変形」は、腱の断裂や骨折を伴っていることがあり、テーピングだけで自己流に済ませられる怪我ではありません。

日本臨床整形外科学会の解説も、「たかが突き指」と軽く考えることの危険性を指摘しています。指の関節に強い痛みと腫れが続く、数日たっても引かない、指を伸ばしにくい・曲げにくい、いつもと違う角度に見える、といったサインがあれば、軽度の突き指ではなく骨折や靭帯損傷が隠れている可能性を疑ったほうがよいとされています。見た目の変形がなくても、痛みが強く残る場合は自己判断で放置せず、整形外科など医療機関を受診することが基本です。

やってはいけない対処と、その場でできる応急処置

NG行動

突き指をした瞬間、反射的に指を引っ張って「関節を戻そう」とする部員は少なくありません。しかし日本臨床整形外科学会は、素人判断で指を引っ張ったり、捻ったり、押し込んだりする対応を明確に避けるべきだとしています。骨折や靭帯損傷が実際に起きている場合、引っ張る動作によって損傷を悪化させてしまう可能性があるためです。また岸谷整形外科クリニックの解説では、マッサージや患部を温める対応も腫れを悪化させる可能性があるとして注意を促しています。受傷直後の「動かして確かめる」「揉んでほぐす」といった行動は、良かれと思ってやってしまいがちですが避けたほうがよい対応です。

正しい応急処置(RICE処置とバディテーピング)

受傷直後の基本は、他の捻挫と同様にRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)です。ザムストの解説では、氷などで患部を冷やし、テーピングで固定して安静にすることが応急処置の基本とされています。固定の方法としてよく使われるのが「バディテーピング(隣接指テーピング)」で、痛めた指を隣の指と一緒にテープで固定し、靭帯の治癒を促す方法です。ただし、これはあくまで応急処置であり、真田整形外科の解説にあるように、損傷の程度によっては数週間のギプス固定や、場合によっては手術による治療が必要になることもあります。応急処置をしたあとは自己判断で練習に復帰せず、できるだけ早く整形外科を受診し、実際の損傷の程度を確認することが安全な進め方です。

練習前にできる予防:テーピングとウォーミングアップ

予防テーピングの基本的な巻き方

突き指をしたことがある指や、パスを受ける機会が多い指には、練習前から予防的にテーピングを巻いておく部員も多くいます。東洋医療専門学校が紹介している人差し指の予防テーピングでは、指の付け根と第一関節にそれぞれテープを1周巻き、その間を縦に1本つなぎ、第二関節では交差するように2本貼る、という手順が紹介されています。テーピングを巻く際は、強く引っ張りすぎないことがポイントです。血行が悪くなり指先の色が赤黒く変化するようであれば、巻き直す必要があります。どの指をどの程度巻くかは選手によって好みが分かれる部分でもあるため、部内のトレーナーや経験のある先輩に一度見てもらいながら、自分に合った巻き方を確認しておくと安心です。

ウォーミングアップでできること

スポーツ安全協会が公開しているラグビーの外傷・障害予防プログラム(流通経済大学・山田睦雄氏監修)では、頸部のトレーニングや体幹の柔軟性を高めるメニュー、スクラム・ラインアウト・タックルといった基本動作を段階的に取り入れるウォーミングアップが紹介されています。指単体を強くするような直接的なメニューではありませんが、体幹や下半身が安定した状態でコンタクトプレーに入ることは、指だけに不自然な力がかかる場面を減らすことにつながると考えられます。練習前のアップを「ただ体を温める時間」として済ませず、こうした予防プログラムの考え方を部内の練習メニューに取り入れてみるのもひとつの方法です。

ポジションによる受傷しやすさの違い

突き指・指の靭帯損傷はどのポジションでも起こりうる怪我ですが、ボールを扱う頻度や接触の仕方によって、リスクの出方には違いがあると考えられます。スクラムハーフやスタンドオフ、センターなどパスを受ける・投げる機会が多いポジションは、単純にボールが指先に触れる回数そのものが多くなります。一方でプロップやフッカーといったフロントローの選手は、スクラムやモールで相手選手の体やジャージを強くつかむ場面が多く、組み合った状態から指を強くひねられる形で受傷することも考えられます。どちらが多いかを断定できる公開データは見当たりませんでしたが、「自分のポジションではどんな場面で指に負荷がかかりやすいか」を意識しておくことは、予防テーピングをどの指に巻くかを考えるうえでも役立ちます。

部として整えておきたい体制

個人の対処だけでなく、部としての備えも重要です。日本ラグビーフットボール協会は、都道府県協会や加盟チーム向けに「ラグビー外傷・障害対応マニュアル」のアプリ版を公開しており、外傷・障害への対応方法を学習できる機能や、安全対策に関する動画を確認できる機能が搭載されています。トレーナーや医療スタッフが常駐していない部であっても、こうした公式アプリやスポーツ安全協会の予防プログラムを部内で共有しておくことで、実際に突き指が起きたときに落ち着いて対応しやすくなります。

また、大学の保健管理センターや提携する整形外科など、部として「困ったときにまず相談する窓口」を決めておくことも有効です。特に新入部員は、突き指を軽い怪我だと思い込んで我慢してしまうことがあるため、先輩やトレーナーが「痛みが数日引かないなら受診しよう」と声をかけられる雰囲気を作っておくことも、指の怪我を長引かせないための備えになります。

まとめ

大学ラグビーでは、捻挫・突き指が外傷全体の約半数近くを占めるとされるほど身近な怪我です。だからこそ「よくある怪我」として軽視せず、痛みや腫れが長引く場合は骨折や靭帯損傷、マレット変形を疑い、自己判断で指を引っ張ったり揉んだりせず、早めに医療機関を受診することが基本になります。練習前の予防テーピングやウォーミングアップ、部内での相談窓口づくりといった日々の備えを重ねることが、指の怪我で長期間プレーを離れる事態を防ぐことにつながります。

所属するリーグの日程や対戦相手を確認しながら練習・ケアの計画を立てたい人は、関東大学対抗戦Aグループの所属チーム一覧や関東大学リーグ戦1部の順位表からラグビーマニアの一次データもあわせて確認してみてください。

出典

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